不動産DX記事まとめ

【海外の不動産スタートアップの紹介】不動産管理業務をDXする「Mynd」

作成者: 片山 幹健|24/06/11 0:00

1Myndのサービス内容について

Myndは、は、2016年にアメリカで設立された総合的な不動産管理サービスを提供するスタートアップ企業です。2020年6月にシリーズCで4,150万ドルを調達し、これまでの調達総額は7,760万ドルに達しています。Myndは積極的にM&Aを進めており、現在約9,600戸の賃貸物件を直接管理しています。

Myndは、デスクトップとスマートフォン向けのアプリを開発し、不動産の貸し手と借り手に対して幅広いサービスを提供しています。貸し手は物件の保守管理や家賃支払いの管理、賃貸状況の確認が可能で、借り手は賃貸物件の検索、オンライン内覧、契約、家賃支払いをアプリで行うことができます。このように、Myndは不動産管理業務の多くをオンラインで効率化し、情報管理の精度を向上させています。

創業者兼CEOのダグ・ブライエン氏は、アメリカンフットボールのプロ選手として活躍中に不動産投資を開始し、引退後に単世帯向け住宅に特化した不動産投資会社「Waypoint Homes」を設立しました。同社は合併を繰り返し、現在の「Invitation Homes」に発展し、8万戸以上の住宅を管理しています。ブライエン氏の経験を基に、Myndはテクノロジーと現地の不動産管理スタッフの組み合わせによって、効率的な不動産管理を実現しています。

Myndは、アメリカの分業が進んだ賃貸業界において、賃貸管理に必要な全ての業務を垂直統合しています。この統合により、貸し手や借り手はMyndを通じて全ての取引を一元管理でき、コストの透明性が向上しています。また、Myndのアプリは、物件の管理や検索、内覧、家賃支払い、修繕依頼など、幅広い機能を備えており、貸し手と借り手の利便性を大幅に向上させています。

現地での不動産管理を担う人材も重要視しており、社員へのIT教育を通じて、賃貸物件の管理や修繕、鍵の交換などを適切に行うことで、高い顧客満足度を実現しています。これにより、家賃滞納率を2%以下に抑えることができています。

Myndは、不動産業務を単にデジタル化するだけでなく、業務の根本的なあり方を変革し、分業が進むアメリカの賃貸業界において、効率的な管理を可能にすることで、不動産ビジネスの新たなスタンダードを築いています。

https://www.mynd.co/

 

 

2Myndの何がすごいのか?

Myndは、様々な業者に細分化されていた不動産管理業務を一括で依頼することができるところが強みですが、何が一番すごいのかと言うと、不動産管理人材を抱えて人が必要なオペレーションも含めて丸っと請け負える垂直統合型のモデルなっている点です。

日本では、不動産所有者が管理会社(PM会社)に丸投げして、PM会社が様々な協力会社と連携しながら不動産管理業務を行っていることが多いですが、Myndはそれらを一社完結でやっています。

そのため管理業務を現場で行うフィールドスタッフを自社で抱えて、テクノロジーも駆使しながら効率的に請け負っているBPaaS的なサービスとも言えます。


3Myndから学べること

不動産管理のようにフィールドスタッフが必ず必要になる業務領域では、どれだけ優れたソフトウェア(SaaS)を提供しても、本質的な課題解決にならなかったり、逆にソフトウェアを使いこなせない利用者ばかりで全然広まらないケースも多いです。

近い領域で、建設業界における施工管理の領域が挙げられます。この領域では、アンドパッドやスパイダープラスなど施工管理アプリを提供するスタートアップが登場していますが、興味深いのがフォトラクションのAI-BPOアプローチです。

他社は、施工管理(現場の点検写真を撮影し、それを図面と紐づけて時系列で管理することによって施工の進捗状況の管理や、異常検知ができる)ソフトウェア+タブレットを提供し、あとは現場の方々が使い方をマスターして、業務効率化を目指す必要があります。

一方、フォトラクションは、BPOを組み合わせることで、現場の写真だけ撮影してもらえば、後の業務はすべて巻き取るというアプローチをしています。

不動産、建設、他にも物流など業務プロセスにおいてデジタル完結が難しい領域ではソフトウェアの提供だけでは大きな生産性向上や利益率の改善が難しいケースが多いので、DXを考える際の、参考になれば、幸いです。

https://www.photoruction.com/bpo