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別荘の共同所有を「事業化」するという選択肢 ──リゾート物件の価値を高める新しい活用モデルとは

作成者: 片山 幹健|25/12/23 0:00

近年、別荘市場では「個人で所有する」だけではなく、複数人で合理的に活用する共同所有(コ・オーナーシップ)が大きな注目を集めています。

背景には、二拠点生活やワーケーションの普及、そして築古別荘の遊休化が進み、維持コストや管理負担の高さが課題として顕在化していることがあります。

一方で、共同所有を上手に設計すれば、稼働率の向上やコスト分散だけでなく、地域の観光資源を生かした事業化モデルとして発展させることも可能です。

本記事では、別荘の共同所有がなぜ拡大しているのか、市場動向と活用の背景を確認しながら、実務的な視点でその可能性を解説します。

第1章:なぜ今「別荘の共同所有」が注目されるのか(背景と市場動向)

別荘の共同所有が広がりを見せているのは、単なるトレンドではなく、リゾート不動産市場の構造変化が要因としてあります。

特に、軽井沢・伊豆・那須・北海道などの主要リゾート地では、コロナ禍をきっかけに別荘需要が急増した一方、稼働率は年間を通じて低く、相続後の放置や維持管理の困難さが課題として顕在化しています。

さらに、築古物件の増加に伴い、修繕負担や遊休資産化がより深刻化しました。このような状況の中、複数人でコストを分担しながら、計画的に運用する「共同所有」や、より体系的に活用する「事業化モデル」が合理的な選択肢として注目されています。

本章では、別荘市場の変化を踏まえながら、その背景を整理します。

1-1. 別荘市場の変化:需要が増えているのに、稼働率は低いという矛盾

2020年以降、国内の別荘市場では二拠点生活やワーケーションの普及を背景に、取得ニーズが急速に高まる現象が見られました。
軽井沢や箱根、熱海など、都市圏からアクセスしやすい地域では中古別荘の成約件数が増え、価格上昇が続いたエリアもあります。

しかし一方で「稼働率」という観点から見ると、多くの別荘は年間のうち10〜20%程度しか使われていないとされます。
これは、日本の別荘利用の特徴として、

  • 「長期休暇の時だけ使う」

  • 「週末利用は天気や予定に左右される」
    といった不確定要素が多いことが要因です。

この利用頻度の低さが、

  • 固定資産税

  • 管理費

  • 庭木の手入れ

  • 水回り・屋根・外壁の修繕費
    などの維持コストとのアンバランスを生む構造につながります。

特に築年数が経過した物件では、外壁・屋根・給排水などの修繕が必要となるタイミングが増えるため、管理負担は拡大します。

その結果、
「持つ喜びよりも、維持が負担になる」
という状態に陥るケースが増えています。

1-2. 遊休化・相続物件の増加:共同所有が合理的になる背景

別荘市場を語るうえで避けられないのが、相続による遊休化の問題です。

多くの別荘は所有者が高齢化し、相続発生後に利用頻度が減少し、
「固定資産税だけ払い続ける遊休資産」
となるケースが増えています。

実際、リゾート地の自治体でも

  • 空き別荘の管理不全

  • 雨漏り・倒木・害獣の侵入

  • ごみ問題
    などの相談が増えていると報告されています。

こうした状況から、
「複数人で負担を分散する」
という共同所有のメリットが以前よりも評価されるようになりました。

特に共同所有は、以下のような効果が期待できます。

固定費の分散

固定資産税・水道光熱費・管理費を複数人で負担することで、1人あたりの負担が大きく下がる。

維持管理の計画性が高まる

1人の判断で放置される状態を避け、共有のルールや管理委託によって劣化を防ぐ。

修繕積立を仕組みとして整備できる

個人所有では先送りされがちな修繕積立を、共同所有ではルール化しやすい。

こうした合理性が、共同所有という仕組みを後押ししています。

1-3. コスト分散だけではない「共同所有」のメリット

共同所有が注目される理由は、単にコストが安くなるからではありません。
より本質的には、利用効率の改善と資産価値の維持が挙げられます。

■ 利用効率の改善

複数人で予約ルールを整備すれば、

  • 使いたい時に調整しやすい

  • 長期間放置される期間が減る
    というメリットがあります。

特に地方リゾートでは、物件が使われない期間が長いほど、湿気・凍結などで急速に劣化することが知られています。

■ 資産価値の維持

建物はメンテナンスを怠るほど価値が下がりますが、共同所有では

  • 年間清掃回数

  • 修繕計画

  • 庭木の管理
    などを仕組み化しやすいため、価値の維持につながります。

以下は「単独所有」と「共同所有」の管理比較イメージです。

【単独所有 vs 共同所有】

項目 単独所有 共同所有
管理負担 すべて個人が対応 分担できる。管理会社に委託しやすい
利用効率 稼働率が低くなりがち 調整ルールによって効率的に利用
修繕計画 個人判断で先送りしやすい ルール化され計画的に積立可能
維持費 全額負担 人数で分散

1-4. 「共同所有 × リノベーション」による価値向上可能性

近年注目されているのが、築古別荘を共同所有しながら、

  • 水回りの刷新

  • 断熱改修

  • 外壁塗装

  • 庭の整備
    などのバリューアップ(価値向上)を行うモデルです。

特に地方リゾートでは、
「立地が良いのに建物の老朽化で価値が落ちている物件」
が少なくありません。

共同所有であれば、

  • 修繕負担を分散できる

  • デザインリノベを実施しやすい

  • 内装テーマを統一しやすい
    といったメリットがあり、結果として利用満足度が高まります。

また、これは事業化においても重要で、
「価値が高い物件ほど予約管理がスムーズで維持しやすい」
という実務上のメリットがあります。

1-5. 自治体・地域側のニーズとの合致

別荘の共同所有は、地域側にとっても利点があります。

地方自治体では、

  • 空き別荘の管理不全

  • 遊休ストックの増加

  • 観光客の滞在期間の短さ
    が課題となっています。

共同所有は、

  • 安定的に人が滞在する

  • 建物が適切に管理される

  • 地域消費が増える
    ため、地域活性化と親和性が高い施策です。

特に「関係人口の増加」を目指す自治体とは相性がよく、
共同所有モデルを後押しするケースも増えています。

ここまで、別荘の共同所有が注目される背景として、複数の要因が複合的に作用していることを確認しました。共同所有はコスト分散だけでなく、資産価値を維持しやすい合理的な仕組みとして、近年のリゾート不動産市場と非常に相性が良いと言えます。

続く第2章では、共同所有の具体的なスキーム(共有名義・フラクショナル・法人化など)と、事業化に向けた運用の仕組みについて、実務的な視点から解説していきます。

第2章:共同所有の仕組みと事業化スキーム(法務・管理・収益)

別荘を複数人で所有する場合、その形態は一つではありません。
「共有名義」「持分方式」「フラクショナルオーナーシップ」「利用権モデル」など、法的な位置付けや運用方法が異なる複数のスキームが存在します。

また、共同所有を“事業化”する場合には、予約管理・費用分担・修繕積立・法人化の是非など、検討すべき要素がさらに増えていきます。

本章では、別荘の共同所有を成功させるために必要な制度設計を体系的に整理し、事業化へ進める際に生じやすいリスクや注意点についても、実務に基づいた視点で解説していきます。

2-1. 共同所有の形態:共有名義・持分方式・利用権の違い

共同所有と聞くと「みんなで家を買う」というイメージが先行しますが、実際には複数の仕組みが存在します。ここでは主要な3つを整理します。

(1)共有名義(持分所有)

もっとも一般的なスキームが「共有名義」です。
複数人が不動産登記簿に所有者として記載され、それぞれが一定の「持分割合」を持ちます。

● メリット

  • 法的にも“所有者”として権利が明確

  • 売却時に持分を譲渡できる

  • 不動産全体の価値向上メリットを共有できる

● デメリット

  • 修繕費や管理費は原則“持分に応じて負担”

  • 利用調整の仕組みを自主管理する必要

  • 共有者の1人が売却する際に調整が必要

● 実務上のポイント

共同所有を検討する多くの利用者は、最初は「共有名義が分かりやすい」と考えます。しかし、実際には以下の理由から必ずしも最適とは限りません。

  • 利用ルールが曖昧だとトラブルの原因になる

  • 修繕積立の規律が緩いと、築古物件では劣化リスクが高まる

  • 相続が発生すると所有者が増え、意思決定が困難に

共同所有において「法的な所有と、運用の仕組み」は別物として考えることが重要です。

(2)フラクショナルオーナーシップ(分数所有)

近年注目されているのが「フラクショナル」と呼ばれる方式です。
1物件を12分割・24分割などして、小口化された権利を取得する仕組みで、会員制リゾートが採用するケースもあります。

● メリット

  • 利用できる期間が明確(例:年間14泊分など)

  • 予約システムが整っているためトラブルが少ない

  • 修繕積立や維持管理が仕組み化されている

  • 出口戦略を設計しやすい(権利の転売制度など)

● デメリット

  • 権利が「所有権」ではなく「利用権」のケースも多い

  • 管理費や修繕積立金が高くなりやすい

  • 物件を自由に改装しにくい

● 共同管理の成功例

海外のタイムシェアなどで普及していますが、国内でも

  • 予約アプリ

  • 修繕計画

  • 管理会社の定期点検
    が整備されたモデルは満足度が高く、地方リゾートとの親和性が高いといえます。

(3)法人化モデル(LLCを設立)

事業化を見据える場合にもっとも実務的なのが「別荘法人(合同会社)」を設立し、

  • 物件は法人が所有

  • 利用者は法人の“出資者”として持分を保有
    という形にするスキームです。

● メリット

  • 出資者の持分を柔軟に譲渡可能

  • 意思決定やルールを会社の“定款”で明文化できる

  • 修繕積立金・管理費の透明性が高い

  • 相続時にもスムーズ(会社の持分として整理しやすい)

● デメリット

  • 設立コスト(登録免許税など)が必要

  • 会計処理・税務申告が発生する

  • 事業規模が小さいとやや負担に感じる場合がある

特に「事業化」を検討する層では最も適合しやすい方式です。

2-2. 事業化モデル:利用料徴収、民泊運用、法人化の3パターン

共同所有を事業化する場合、主に以下の3つの方向性があります。

(1)利用料徴収型(セミ・プライベート型)

出資者は利用するたびに「利用料(清掃費込み)」を支払う方式です。
もっともトラブルが少なく、共同所有の透明性が高いモデルです。

■ 実務ポイント

  • 利用料を負担することで「使いすぎの偏り」を防ぐ

  • 清掃費・光熱費の実費を明確にできる

  • 修繕積立金と分離して管理できる

特にLLC方式と組み合わせると整備しやすく、安定した運営が可能です。

(2)民泊稼働・簡易宿所などの旅館業を併用する方式

利用者が使わない期間に、民泊として稼働し収益を得る方式です。
ただし、ここでは不動産投資や利回りを主目的にするのではなく、維持コストの補填が目的です。

■ メリット

  • 稼働しない期間の維持費を軽減できる

  • 利用者の年間費用負担を抑制できる

■ 注意点

  • 法規制(旅館業法・民泊新法)への適合

  • 近隣への説明

  • 清掃・リネン費などの運営負担

地方リゾートでは旅館業取得が比較的容易なケースもあり、
「共同所有×民泊」は実務上よく採用される組み合わせです。

(3)法人化(合同会社)による共同所有ビジネスモデル

事業化の中心に位置するスキームが、
LLC(合同会社)を設立し、出資者へ持分を販売するモデルです。

● 仕組み

  • 物件を法人が所有

  • 出資者は「社員(持分保有者)」として登録

  • 利用ルール・修繕計画・管理体制を法人の枠組みで運用

  • 会計と利用履歴を透明化できる

● 法人化の利点

  • 決算書に基づいた透明性の高い運営

  • 修繕積立金を会計処理できる

  • 持分の売却・相続がスムーズ

  • 社員同士のルールを定款に盛り込める

地方の築古別荘を再生する際も、法人化によってスキーム全体が安定し、利害調整が容易になります。

2-3. 予約・管理オペレーションの重要性

共同所有の成否を左右するのは“予約と管理”です。
いくらスキームが合理的でも、利用調整や清掃手配が混乱すると満足度は大きく低下します。

■ 予約管理の仕組み化

共同所有では、以下のどれかを導入するのが一般的です。

● カレンダー型(Googleカレンダーなど)

シンプルで導入が容易。ただし人数が多いと煩雑。

● 専用予約システム(Airhost、Beds24など)

チェックイン情報の共有、清掃依頼、ロック管理と連携できる。

● ポイント制(利用ポイント割り当て)

公平性が高く、長期利用と短期利用のバランスを取りやすい。

■ 清掃・維持管理の可視化

別荘の特性として、以下の管理項目が非常に重要です。

  • 清掃の質

  • 浴室・水回りのカビ対策

  • 庭木の剪定

  • 冬季の凍結防止

  • 湿気と換気

このため、管理会社の定期点検や、年間の管理スケジュールをすべて共有できる仕組みが必要になります。

2-4. 税務と出口戦略:譲渡・相続の整理

共同所有では、出口戦略をあらかじめ考えておくことが重要です。

■ 出口戦略の種類

● 持分譲渡

利用をやめたい人は持分を第三者へ譲渡する。
ただし、買い手が見つかりにくいケースがある。

● 法人化モデルの持分譲渡

合同会社の“持分”を売買する形となり、法務上・実務上スムーズ。

● 物件全体の売却

共有者全員の同意が必要となるため、シナリオ化が必須。

■ 税務上の考慮点

  • 固定資産税

  • 法人化した場合の法人税

  • 修繕費・管理費の会計処理

  • 持分譲渡の際の譲渡所得の取り扱い

共同所有は利用と費用が複雑に絡みあうため、初期段階でルールを明確化することが重要です。

■ チェックリスト:共同所有を始める前に確認すべき点

  • 共有名義か、法人化か

  • 利用ルールは明確化されているか

  • 修繕積立は仕組み化されているか

  • 管理会社の選定基準はあるか

  • 出口戦略は合意されているか

このチェックリストは、事業化の成功率を大きく左右します。

本章では、別荘の共同所有を進めるうえで欠かせないスキーム設計について、共有名義・フラクショナル・法人化という3つの主要モデルを中心に整理しました。また、事業化を目指す場合の運営体制や予約管理、民泊併用など、実務で発生する具体的なポイントについても確認いただけたと思います。

次章では、これらのスキームが実際にどのように運用され、どのような成果を生むのかを「事例ベース」で深掘りします。築古別荘の再生、地方リゾートでの法人化スキーム、民泊とのハイブリッド運用など、実際の活用モデルを通じて、より具体的なイメージを持てる内容にしていきます。

第3章:共同所有 × 別荘再生 × 事業化の実践モデル(事例ベースで理解する)

これまで、別荘の共同所有が注目される背景と、事業化スキームの具体的な形について整理してきました。しかし、読者の多くは「実際にどのように運用されているのか」「小規模でも実現できるのか」という点をもっとも気にされます。

本章では、実務現場で起きている3つの代表的なモデルを取り上げ、メリットと課題を確認しながら、どのような選択肢が現実的で、どのような点に気をつければよいのかを具体的に解説します。

築古物件の再生、地方リゾートでの法人スキーム、民泊とのハイブリッド運用など、多様なケースを俯瞰しながら、読者が自分の目的に適した形をイメージできるよう構成しています。

3-1. モデルケース①:築古別荘を3名で共同所有し、稼働率を60%へ改善

最初の事例は、もっとも小規模で実現しやすい「数名での共同所有」です。
築古別荘を3名で購入し、利用料方式で安定運用したケースを見ていきます。

■ Before:遊休化した築古別荘

あるリゾート地で見られた典型的なケースとして、築30年以上が経過した木造別荘があります。前オーナーが相続をきっかけに利用しなくなり、年間稼働率は10%未満。

  • 水回りの老朽化

  • 屋根の劣化

  • 湿気によるクロス剥がれ
    などの問題が散見されました。

固定資産税・管理費だけがかかり続け、資産としても維持が困難な状況です。

■ After:3名の共同所有+リノベーションで蘇る

この物件を3名で共同購入し、次のように運用の枠組みを整えました。

● ① 利用料方式の導入

各オーナーは利用時に「利用料+清掃費」を支払い、実費を透明化。

● ② 年間スケジュールを予約アプリで共有

Airhostを採用し、利用希望が重複しにくい週末枠は「抽選方式」、
平日は「先着方式」とするなど公平性を担保。

● ③ 築古改修

  • 水回り交換

  • キッチン更新

  • 床材の変更

  • 簡易的な断熱補強

リノベ費用は3名の話し合いの上、均等負担としました。

■ 運用結果:稼働率が自然に改善

リノベ後、年間稼働率は**約60%**へ向上。
理由はシンプルで、
「使いやすい物件は自然と利用頻度が増える」
ためです。

共同所有では物件が放置されにくいため、湿気・給水設備の故障なども起きにくく、結果として維持費の予測性も高まりました。

■ 注意点

このモデルはシンプルで導入しやすい一方、

  • 将来の修繕積立

  • 相続発生時の対応

  • 利用者の入れ替え(持分売却)
    などの取り決めを最初にルール化しておかないと、後に調整負担が発生します。

3-2. モデルケース②:「別荘法人(LLC)」を活用した地方リゾートの再生モデル

次の事例は、より“事業化”寄りのモデルです。
地方リゾートで多く見られる、
「築古別荘を法人が取得し、出資者へ持分を販売する」
という方式です。

■ 背景:地域側のニーズと出資者のニーズが結びつく

地方リゾートでは、

  • 空き別荘の増加

  • 管理不全

  • 短期滞在が中心で地域消費が少ない
    といった課題があります。

そこで、自治体や地元管理会社と連携し、
「別荘法人」×「出資者」×「地域」
の三者が協力する仕組みが採用されました。

■ 仕組みの概要

① 合同会社を設立

法人名義で物件を取得し、出資者は合同会社の“社員(持分保有者)”となります。

② 利用可能日数・予約方式を明確化

例:

  • 年間14泊の利用権

  • 予約アプリで公平に割当

  • 利用料は実費精算

③ 修繕計画を5年スパンで策定

  • 屋根

  • 給排水

  • 外壁

  • エアコン
    などを定期更新計画に含めることで、維持コストの予測性を高めます。

④ 管理会社との連携

掃除・鍵管理・点検をアウトソースし、利用者の負担を軽減します。

■ 結果:地域経済に一定の“循環”が生まれる

このモデルの特徴は、単なる共同所有にとどまらず、
地域との接点が増えることにあります。

  • 出資者が地域の飲食店・アクティビティを利用

  • 物件の修繕に地元業者を活用

  • 関係人口の増加による地域課題の改善

これにより、共同所有の枠を超えた“地域リノベーション効果”が確認されました。

■ 注意点

法人化はメリットが多い一方、

  • 会計処理

  • 税務申告

  • 定款の設計
    などの専門性が必要となり、ある程度の運用体制が求められます。

3-3. モデルケース③:共同所有 × 民泊のハイブリッド運用モデル

最後は、共同所有しつつ使わない期間に民泊として稼働するハイブリッド方式です。
維持費の補填に役立つため、地方リゾートで広く採用されています。

■ 仕組みの概要

● ① 共同所有者は予約カレンダーで利用日を確保

例:最大3ヶ月先まで予約可能。

● ② 空日程は管理会社が民泊として販売

  • OTA(楽天トラベル、Airbnb等)

  • チェックイン管理

  • 清掃手配

これらを管理会社が代行します。

● ③ 実費ベースで維持費の補填

賃料収入から

  • 清掃費

  • 管理手数料

  • 光熱費
    を差し引き、残額を積立金として管理します。

■ メリット

  • 利用者の年間負担を軽減できる

  • 稼働しない期間の空室リスクを減らせる

  • 維持管理がオートメーション化しやすい

■ リスクと注意点

民泊との併用には、以下の点への注意が必要です。

● 法規制(旅館業・民泊新法)

用途地域や建築基準法上、民泊できないケースもあるため事前確認が必須。

● 近隣への説明

地方であっても、近隣の生活者との調整は欠かせない。

● 清掃費の上昇

稼働率が高まると清掃回数が増え、費用負担が高まる場合がある。

● 品質維持

民泊利用が増えると備品の消耗が進むため、交換のルール化が必要。

これらをクリアできれば、共同所有と民泊稼働の相性は良好です。

3-4. モデル比較表

最後に、3つの代表モデルを比較します。

モデル 特徴 メリット 注意点
① 少人数共同所有(3名など) 小規模で始めやすい 修繕計画が立てやすい 相続・持分売却のルール設計が重要
② 別荘法人(LLC) 事業化に強い構造 持分譲渡・意思決定がスムーズ 会計・税務の管理が必要
③ 共同所有 × 民泊 維持費補填につながる 稼働率が安定しやすい 法規制・近隣調整が必要

本記事では、「別荘の共同所有」というテーマを、背景・スキーム・事例という3つの視点から体系的に整理しました。

共同所有は、単独所有では負担が大きくなりがちな別荘を、複数人で合理的に運用できる方法として注目されています。また、法人化スキームや民泊併用など、目的や規模に応じて柔軟に設計できるため、築古別荘の再生や地域活性化とも親和性が高いモデルです。

一方で、予約管理・修繕計画・出口戦略など、事前に整理すべきポイントも多く存在します。今後は、読者が自身の目的に応じて、最適な共同所有モデルを検討する際の一助となれば幸いです。