今回は、少しニッチですがサブコン(サブコントラクター)と呼ばれる専門請負業者向けに資材管理と資材調達をDXするサービスを提供しているStructShareというイスラエルのスタートアップを紹介します。
私も別会社で落書き消去や外壁塗装を実施する会社を運営しており、資材の調達にはペインを感じていたので、今回注目しました。
建設業界と言うと、建設工事を請け負うゼネコン(元請け事業者)が想起されますが、実際には一次、二次、三次と多重下請け構造になっており、配管・電気・内装・コンクリート・空調など様々な分野の工事が専門請負業者(サブ・コントラクター、いわゆるサブコン)に大きく依存しています。
StructShareはイスラエルのスタートアップですが、メインの事業エリアは米国で、米国内だけでも数十万社の下請け業者が存在し、市場は非常に細分化されています。サブコンによる資材調達のデジタル化は遅れており、マニュアルワークフローによる非効率的な業務の発生だけでなく、資材の取り違えや請求ミスによる大きな損失につながっています。また、サブコンによる部材調達金額は、米国内だけでも年間$500 billionを超えていると言われており、調達業務改善の効果は非常に大きいものと考えられます。
StructShareは建設部材調達に関わる全関係者(現場作業者、プロジェクトマネージャー、経理、調達、倉庫、サプライヤー)を1つのプラットフォームでつなぎ、調達オペレーションのデジタル化を実現しています。
StructShare は、GenAIを活用して資材調達を効率化しているのが強みです。例えば、サブコンが施工案件を実施する場合に原価を適正な水準に抑えるためにほとんどのケースで相見積もりを取る必要がありますが、見積もりを取る時間や精査する時間が十分にあるわけではありません。StructShareのメリットは、見積もりを通じて競争力のある価格を取得し、電子メールの整理に費やす時間を減らすことで、コストを削減できる点がまず一つ挙げられます。加えて、購買依頼から発注書、配送のキャプチャ、ERP との同期を含む完全に自動化された請求書調整まで、最終的に購買業務全体をDXしています。
StructShareのGenAI アプリケーションは、価格、在庫状況、リード タイムなどのさまざまな要素を分析して、リアルタイムで見積もりを自動最適化し、最適な購入決定を下す機能を提供します。必要な資材を時間どおりに最良の価格で入手し、調達プロセスを効率的に管理できるようになります。
現状は、資材調達のプロセスの中でも相見積もりの取得部分の効率化やERPなどへの連携のところにフォーカスしておりますが、将来的に図面や現場写真などをアップロードすることで必要な資材をAIが推測し、最適な資材調達を決定して見積もりを生成するという自動化が可能なのではないかと考えています。また、在庫データや過去の発注データから将来的な需要を予測し、定期的に発注が必要な資材については発注ボリュームのフォーキャストや最適化も期待されます。また、単純な資材調達だけではなく製造工場等に特注部品、建材の発注を行うなど用途も広がるとさらなるGMVの成長も見込まれます。
日本にも資材調達の領域に挑戦しているスタートアップは多いですが、大企業は購買部門がしっかりしており、参入ハードルが高いと感じている一方、サブコンなどは工事によっては一人親方的な個人事業主に近いプレイヤーも多く、広がる余地は大きいのではないかと思います。