【海外の不動産スタートアップの紹介】家賃を支払えるクレジットカード「BILT」
今回ご紹介するのは、家賃の支払いに使えて、家賃の支払額に応じてポイントも付与されるというありそうでなかったクレジットカード「BILT」です。
今回は、家賃を支払えて、しかもポイントも貯まるというアメリカのクレジットカード「BILT」を紹介します。
2024年1月に2億ドル、8月に1.5億ドルを資金調達し、時価総額は32億ドルのユニコーンです。
1BILT Rewardsのサービス内容について
日本にもクレジットカードで家賃を払えるケースはありますが、あまり一般的ではないかと思います。アメリカも同様で、これまで借主側に手数料がかかるためクレジットカード払いによる家賃支払いが普及してこなかった。
オンライン決済プラットフォームを使ったカード払いとなるため、高額な家賃にさらに手数料(1~3%程度)が上乗せされ、借主側の負担が増してしまいます。このため、家賃支払いは、小切手払いや銀行口座からの引き落としが主流でした。
BILTは、家賃をクレジットカードで借主側の手数料ゼロで支払えて、しかもポイントまで貯まるという画期的なビジネスを展開しています。
カードで家賃支払いすると1ドルごとに1ポイント貯まり、1ポイントは1セント相当なので1%の還元率と言えます。ポイントの使い道は多岐にわたり、多数の航空会社、ホテル、レストラン、フィットネスクラブや、アマゾンなどでの買い物に利用できる。還元率は下がるものの、家賃の支払いにポイントを充てる、あるいは将来的に住宅を購入する際の頭金に回すことも可能です。
2BILTの何がすごいのか?
アイデア自体は、割と誰でも思いつくものですが、明確な競合サービスは登場していません。発想自体はシンプルではありますが、実現は難しかったようです。クレジットカードの家賃利用は着金タイミングがだいぶ先になったり、規制当局との粘り強い交渉が必要だったりしてなかなか実現には至りませんでした。Built Rewards CEOのAnkur Jain氏が、住宅関連の保険スタートアップや、ローンスタートアップを経営してきた経歴を持っていたからこそ、最終的には実現できたと言えます。
BILTのプラットフォームで行われる支出は年間 300 億ドル以上に急増し、ロイヤルティプログラムも急速に拡大しています。10 大集合住宅管理会社のうち 7 社が参加しており、分譲マンションや HOA (管理組合)市場にも進出しています。また、 21,000 軒以上のレストランと 3,500 軒のフィットネス スタジオがポイント利用の対象となっています。
3BILT Rewardsから学べること
家賃をクレジットカードで支払いたいと思ったことがある人は多いと思いますが、意外と実現していないサービスというのが世の中にはまだ意外とあるというのが、今回の事例から学べると思います。
少し領域は異なりますが、日本でもカードの保有目的や、ターゲットを尖らせてチャレンジャーバンク(スマホ等で金融サービスを提供する新しい銀行)を目指すスタートアップがいくつも登場しています。
例えば、Nudgeは学生などZ世代にフォーカスした推しを応援できるクレジットカードを展開しています。ルミネがルミネでよく買い物してもらうためにルミネカードを提供するように、様々な発行者が自分達とのエンゲージメント向上やLTV向上を目的としたカードを気軽に提供できるようになることで、発行者にとってはエンゲージメント強化、解約率の低減、LTVの向上などの利点を得られ、利用者にとっても自分の好きなこと、自分のライフスタイルがポイント・特典に変わるという利点があります。
賃貸マンションの企業が、長く住み続けてもらうために自社のマンションブランド専用のカードを発行するとかもありかもしれません。