今回は、賃貸管理物件の入居者とのやり取りを代わりにやってくれるAIエージェントを提供するEliseAIを紹介します。
様々な領域(飲食店、病院、引越し、カーディーラーなど)でお客様との電話やチャットのやり取りを完全に代行してくれるAIエージェントサービスが最近続々と登場していますが、不動産における入居者(テナント)とのやり取りもAIエージェントと非常に相性が良いユースケースで、EliseAIも急激に伸びています。
1EliseAIのサービス内容について
EliseAIは、いくつかのプロダクトに分かれています。
・LeasingAI
見込み客を24時間年中無休で管理し、90%の作業自動化で賃貸契約の成約率を125%以上向上させるプロダクトで、リーシングのための営業メールなどを自動で代行してくれるのが特徴です。
・ResidentAI
入居者とのやり取り(チャットがメイン)を、自動化するプロダクトで、 入居者のエンゲージメントを40%向上させ、延滞を50%削減できているそうです。
・EliseCRM
見込み客と入居者情報の中央ハブとして機能する無料の高度な CRM システム。
上記の3つで構成されています。パッと機能だけを見るとこれまでもあったような気がしますが、EliseAIの特徴は電子メール、SMS、ウェブチャット、音声を通じて AI インタラクションを提供するマルチモーダルアプローチであり、特にユニークな機能「VoiceAI」が優位性になります。
これまでもチャットボットなどテキストベースのやり取りを自動化したり効率化できるツールは数多くありましたが、ほとんどの利用者が電話を好む業種などでは結局電話番を置かざるを得ず、大した業務工数の削減にはなりませんでした。(消費者側の立場で、サポートセンターに電話したが、全然つながらず電話を待たされてイライラした経験や、問い合わせ先で対応できないと言われてたらい回しされた経験がある方も多いのではないでしょうか)
EliseAIはテキストベースだけではなく音声ベースのやり取りもすべてAIに任せられるため、文字通り人がやっていた仕事を完全にAIに代行させることができます。
2EliseAIの何がすごいのか?
決められた手配を行うや、流れの決まったトークスクリプトに沿って対応するのはプログラムとしてもそんなに難しくはありませんが、入居者とのやり取り対応には非常に多くのパターンがあり、しかもチャットだけではなく電話など複数の連絡方法があります。そして、それらすべてにAIが対応する必要があります。(エアコンが壊れたなどの修理に関するやり取りや、家賃の支払いに関するやり取りなど)また、不動産に関する専門性や賃貸物件の情報などお客様とやり取りをする上であらかじめ知っておかなければならない業務知識も多いです。
複数(テキスト、音声など)のAIモデルを組み合わせてマルチモーダル(メール、チャットだけでなく、電話なども)に対応できるようにしている点(オーケストレーション)と、賃貸物件や不動産に関する情報をAIにきちんと学習させている点(ファインチューニング)が優位性と言えます。
AIエージェントは、割と簡単にサービス開発できてしまうので、よく調べてみるとGPTなど一つのAIモデルをAPIで利用して、ちょっとプロンプトで挙動を制御しただけのサービスも多かったりします。ChatGPTを利用したことがある方ならわかるかもしれませんが、普通にやり取りする分には問題ないですが、少し込み入った話や聞き方によっては違和感のある返答が来てしまうという感じになりやすいです。
3EliseAIから学べること
EliseAIは、不動産領域から開始したものの、今はヘルスケア領域にも参入しています。
「HealthAI」というプロダクトは、クリニックと患者とのやり取り、予約、請求書発行などのタスクを自動化しています。
AI Nativeなサービスは特定業界に絞ってバーティカルなAIエージェントサービスをリリースしていますが、これまでのSaaSやソフトウェアに多かった周辺領域に広げていくという拡大の仕方ではなく全く異なる業界に広げていく戦い方ができています。