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時価総額ランキングで見る国内不動産スタートアップ①

日本国内の不動産スタートアップの時価総額ランキングの上位をピックアップしています。


不動産クラウドが、独自に調べたところ、2024年4月時点で、不動産スタートアップ(ベンチャーキャピタル等から株式による資金調達を行なっている未上場企業)は国内で134社でした。今回は、不動産スタートアップに限定して、時価総額順に10社紹介していきます。第一弾は1~5位までを紹介します。弊社の独自調べなので、時価総額など正確な数値ではない場合もありますが、ご了承ください。

1位:NOT A HOTEL株式会社(時価総額 約120億円)

NOT A HOTEL株式会社は、ホテルとして貸出可能な住宅を開発・販売しているスタートアップです。住宅のオーナーは、自身が自宅や別荘として利用するか、ホテルとして貸し出すかをアプリで切り替えることができます。アラタナ(2015年にZOZOへグループイン)の創業者濵渦伸次氏が2020年に設立しています。

アプリ操作だけでホテルになる住居」NOT A HOTELが今夏、全9棟をオンラインで販売開始 | From DIAMOND SIGNAL |  ダイヤモンド・オンライン

NOT A HOTELは、1棟丸ごと購入することもできますが、基本的にはフラクショナル・オーナーシップやタイムシェアと呼ばれるスキームで、物件の一部所有権を購入することで、年間10~30泊分の利用ができるシェア購入がメインです。(他にもさらに小口化した宿泊の権利をNFTで購入するタイプもあります)

また、使用しない期間はホテルとして貸出もできるので、分譲ホテル(ホテルを建設して、ホテル客室をそれぞれ投資家に分譲販売した後に賃貸借契約を締結してセールスアンドリースバックし、ホテルとして運営するスキーム。不動産投資商品と自己利用の中間の位置取りなので、不動産投資商品としては利回りは低めなことが多いです)です。にも近いかもしれません。ホテル利用の期間は、一休.comなどで宿泊予約が可能です。

この事業の肝はキャッシュフローな印象を受けました。通常、分譲ホテル事業を行う場合、ホテル建設に適した広めの用地(リゾートでホテル用地を取得しようとすると、場所にもよりますが、土地だけでもかなりの投資額になります)を取得し、建物を建設しながら並行して分譲販売を行いますので、建設費をはじめとした初期投資がかなりかかり、それを分譲販売によって早期回収することを目指します。一方、NOT A HOTELは、土地は購入するもののCGによるイメージパースで販売を行い、購入者の初回入金で、建設前からキャッシュが入ってきます。そのため、手元に潤沢なキャッシュがなくても開発案件が進められ、事業の成長スピードを担保できるのが強いと感じました。

2位:WealthPark株式会社(時価総額 約120億円)

WealthPark株式会社は、不動産管理会社向けに、業務効率化・管理支援ツールを提供する企業。管理会社と不動産オーナーをつなぐ業務支援システム『WealthParkビジネス』、インバウンド不動産投資を支援する『WealthParkアセットマネジメント』などを運営しているスタートアップです。スタートアップ(ベンチャーキャピタルなどから株式による資金調達を行なって上場を目指している新興企業)ですが、設立は1967年です。

WealthParkビジネスで実現する、不動産管理のDX

WealthParkビジネスは、不動産オーナー様と管理会社をアプリでつなぐ業務支援システムで、 不動産管理会社にはクラウド型システムを、オーナー様にはオーナーアプリ(スマホ用アプリやWEBサイト)を提供することで、不動産管理会社からオーナー様への収支報告や売買提案などのやり取りが簡単かつスピーディになるサービスです。

また、WealthParkアセットマネジメントは、オーナー様(主に海外の不動産投資家)向けに、資産管理プラットフォームを提供しています。保有資産のポートフォリオや物件の管理状況、収支を好きな時に確認できます。
WealthParkアプリは香港、台湾、中国、シンガポール等のアジアや欧米諸国等の5万人以上のオーナーに提供されているそうです。

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多くの不動産投資家と接点をつくることが、WealthParkの成長ドライバーで、そのためにプロダクトやサービスを広げている印象を受けました。直近では、2021年に株式会社クラウドリアルティを買収して不動産クラウドファンディングのサービス「WealthPark Alternative Investments」もはじめました。

3位:株式会社すむたす(時価総額 約106億円)

株式会社すむたすは、主に住宅を対象とした中古不動産の売買サービスを運営する企業。「すむたす売却」というAI査定を活用してオンラインで最短1時間で売却価格がわかり、最短2日で確実に現金化できる売却サービスと、「すむたす直販」という仲介手数料ゼロでマンションが買える、リノベーションマンションを対象としたポータルサイトを運営しています。

すむたす売却は、iBuyerと呼ばれるテクノロジーによって不動産の買取再販モデルを変革するサービスです。アメリカではOpendoorやOfferpadなど上場するスタートアップも出てきた領域です。不動産は、一般的に仲介するよりも買取再販の方が利益が出ます。日本の場合は、宅建業法によって不動産の仲介手数料は、買い手と売り手の両方を自分で見つけてくる両手仲介でも手数料率は物件価格の6%+6万円が上限となります。それに対して、買取再販は自社で物件を一度仕入れて、自社の利益を上乗せして販売しますので、仲介手数料の上限を超えて利益を上乗せできることになります。ちなみに、先ほどのOpendoorやOfferpadなどでは、粗利率が12%前後になっているので、仲介の倍くらいは利益が出るという計算になります。

一方で、買取再販は買取した物件が期待通りの価格で販売できないリスクや、買取から再販までの期間が想定よりも長くなってしまうリスクがあり、それらのリスクをAIなどのテクノロジーによって解消したモデルがiBuyerです。

iBuyerは、AI査定によるオンライン完結の不動産買取によって、事業者にとっては買取再販ビジネスのリスクを最小化できる、不動産所有者にとっては売却したい不動産をすぐに現金化できる画期的なビジネスでしたが、高速で大量の物件を買取するには多くの現金が必要になります。このファイナンスをどうするかがiBuyerの非常に難しいポイントです。

これまでは、異次元緩和による超低金利が寄与し、借入によって資金を確保しやすかった点、不動産価格も上昇基調だったため、買取再販による利幅も期待しやすかった点が追い風になっていましたが、利上げ局面に入り、現在は苦しい状況に変わってしまいました。不動産買取のための借入コストが膨らみ、不動産価格も上昇しにくく、再販も決まりにくい。もちろん、AI査定の条件を利上げ局面に合わせて厳しくし、大きな利幅が獲得できる物件を厳選して買取再販を行うしかないのですが、そうなると対象となる物件の幅が狭まり、事業規模は縮小せざるを得ません。

そのため、iBuyer一本足打法ではなく、不動産売買のマッチング手法やマネタイズを複数用意して、安定的に不動産の売り手と買い手を集め続けることがポイントになりそうです。

4位:トグルホールディングス株式会社(時価総額 約95億円)

トグルホールディングスは、不動産ビジネスの新しい在り方を作ることを目指している企業で、自社でも不動産開発を行なっているため、創業4年で売上約50億円の達成見込みとリリースに記載があります。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000097866.html

直近、「sketch」という開発用地の流通プラットフォームをローンチし、不動産情報の収集・分析や建築物の設計・計画策定、投資リスク評価と売買マッチングをAI技術を活用できるサービスなどを提供しています。

昨年、シリーズAで総額約5.6億円の資金調達を実施しており、不動産関連技術(PropTech)にフォーカスしたベンチャーキャピタル、MetaProp Ventures IV, L.P. (本社:ニューヨーク)の初の日本企業への出資となったことも注目ポイントです。

5位:株式会社estie(時価総額 約82億円)

estieは、オフィス賃貸業務の効率化を目指すプラットフォームを提供しています。全国8万棟の基礎物件情報、約10,000件の空室情報、東京・神奈川・大阪・愛知の主要エリアのテナント情報など、必要なすべての情報が揃う業界最大級のオフィスデータ分析基盤を提供しています。また、AIアルゴリズムによる推定賃料や将来供給情報なども提供しており、オフィス賃貸業務の圧倒的な効率化を実現しています。

不動産業界は、情報がブラックボックス化されていることが多く、そのために市場の透明性が低いという課題がありました。しかし、CompStakやestieのようなスタートアップの登場により、これらの情報がデータベース化され、市場の透明性が向上してきています。これにより、不動産業界はより効率的で公正な市場へと変化していくことが期待されます。

estie(エスティ)、不動産売買領域に進出|不動産のいえらぶニュース

直近では、estie物件売買というサービスのリリースを行い、売買領域に進出されることも発表されました。不動産業界の中でも特にオフィスなどの商用不動産の売買領域はブラックボックス化されているので、注目です。

まとめ

今回は、時価総額という切り口で国内の不動産スタートアップについて紹介してみました。他の領域と比べると、全体的な社数や上位スタートアップの時価総額はそこまで大きくない印象を受けました。不動産スタートアップは、海外ではユニコーンがいくつも誕生している領域ではあるので、今後にも注目です。次回は、6位~10位も紹介したいと思います。

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日本は、1980~90年代に建設されたビルが多く、築40年を経過して老朽化が進んだビルが増えてきました。ここでは事業用の不動産に関する情報および不動産DXに関する情報発信を行っています。(掲載記事の多くは、試験的にChatGPTにライティングをお願いしています)